素人の分際で虫の本『ときめき昆虫学』を書いたり、昆虫のイベントをしたりしだしてから、「最近増えている“虫ガール”についてコメントしてほしい」という奇っ怪な依頼がたまに舞いこむようになった。
「本当に“虫ガール”とやらが増えているんですか? コアな虫好きが増えているとはあまり思いません。“○○ガール”を流行らせることで得するメディアの人たちがいるだけだと思います」
「ライトな層の広がりについてはイベントなどで実感しますし、自分の本で、虫や虫に関わる人々の世界に興味を持ってくれる人がいたらすごく嬉しいですが……でも、イベントに来てくれる若い人たちは虫だけにのめりこんでるわけじゃなくて、単に好奇心旺盛な人たちですよ。先月は宇宙研究者の講演を聴きに行って、先週はきのこをテーマにしたクリエイターズマーケットに参加して、今週は苔の観察会……というような。ネットやSNSの普及で、似た趣味嗜好の人たちとつながりやすくなって、情報もたくさん入ってきますから」
 わたしとしては大真面目の回答だが、あまり歓迎されない。質問をした人たちはだいたい「うわ、面倒だな」という反応で、そのまま返信が絶えることもあった。「“女性ならではの感性”で虫を愛でる“虫ガール”が増えはじめた」という趣旨のストーリーを、わざわざバラして組み立てなおす必要も余裕もないのだろう。
 でも、好奇心を満たしに行ける場所が豊富にあるというのは“○○ガール”が増えているかなんてことより、ずっと素敵な事態じゃないだろうか。そうは思いませんか? と問い返してみたい気もする。