ホームレスの話は、いささか時代遅れな感じがするんだけども、いろんな事があるんで引き続き。
ハウスレスとホームレス。
きっと、まじめで左翼な方々には当然の話で俺なんかに指摘されるまでのことはないとおもうんだけど、「ホームレス」っていう言葉の定義がきっちりしてないような気がする。なんか「野宿者一般」を十把一絡げにホームレスだと思おうとしていると、ちょっとアレだとおもう。
どっかのコメント欄にも書いた記憶があるんだけども、野宿してるけど高収入って奴らは結構いる。年収六百万以上稼いでいて、公園で生活してる奴なんてざらにいる。 そこらへんのIT土方よりも全然まし。みた事もないような工事用機器をどっかに保管しておいて、高いスキルの求められる土木作業現場なんかに稼ぎにいって、ちゃんと郵便貯金して、毎晩客単価五千円ほどの居酒屋で飲み食いして、サウナいって、寝るのは公園って生活を続けてる人を、俺みたいな1年ちょっとしかホームレスしてなかった半端もんでも、2~30人目撃してるし、いまだに付き合いのあるのが4~5名いる。こういうのは、ハウスレスではあっても、ホームレスじゃあないわな。たんに家に住んでないだけ。
一方、本当のホームレスというのは、なーんにもない。
そもそも働く気がない。 やる気がない。生きている自覚もない。ただそこに浮遊している。中には便所とか行くのさえ面倒くさくなってしまって糞尿垂れ流しのやつとかもいる。なんせ息するのもめんどくさいんだもの。なんだったら一日中寝てたいけど、冬寒いと寝れないし、昼間はまぶしくて寝れないから、そこらへんとりあえずうろつく。なにが一番めんどくさいかって、人と関わるのがめんどくさい。つーか、相手の事考えるのがめんどくさい。そういう局面を迎えないために、なるべく目立ちたくない。目立たないためには、人ごみが一番だ。「木を隠すには森」だから今日も歌舞伎町とか上野とかいく。でもやっぱり「認知欲求」ってのは、人並み(っていうか実は人並み以上)にあるので、ときどき目立つような事をしでかす。交番の前で暴れてみたりとか(とりあえずおまわりさんはかまってくれる)、夏休みの公園でラジオ体操がはじまったら全裸でうろうろしてみたりとかね。 でもそれもすぐ飽きるから、あんまり深くつっこまないでほしい。「なにがしという人物がここにいる」とまでの認知を求めていない。俺が誰かわからない程度でいいから、「あ、あそこにだれかいるな」程度でいいから、認知してもらいたいだけ。そうでないと自分が生きてるか死んでるか忘れちゃいそうなんだよ。ほんとついででいいんだよ。ほんのついでに、「ああ、あそこに人がいるな」という「ついでの認知」を払ってほしい。まあ俺も、ついでに生きてるようなもんだからさ。
つーのが、ホームレス。家もなければ精神的な拠り所もない。ハウスはもちろんないし、ホームもない。だから、ホームレス。
こういう精神状態ってのは、通常な人からは理解出来ない事だと思う。 でもね、人間、ある閾値を超えたらこれぐらいなんもかんも面倒くさくなる。で、メンドクサクなって、羞恥心の敷居を下げたらこんな楽な生き方ないんです。もうね、一度やったらやめられないんですのよ奥さん。
ホームレスに至る道。
さっき、「ある閾値を超えたら」って書いた。 その閾値の迎え方が3パターンある。
まずは、知的障害があったり知能が低かったりして生活が破綻してホームレスになったパターン。
あんまり若いのにはいない。60代以上に結構いる。親が死んじゃった後、ホームレスになってるんだろうと思う。(俺がホームレスしてたときに聞いた話では、四十年以上前に世間体を気にする親に捨てられてそれ以降ホームレスしてる人が結構いるらしい。昭和30年代以前はそういう話がざらにあって、平成の御代までいきながらえたって人が結構いるっていうんだから、なんだかすごい)
で、「ホームレス」という職業に就職/転職したパターン。
普通の生活してて、何らかのおりにホームレスにあこがれを抱き、ホームレスとなる人。俺が新宿でうろついてたころよく一緒にワンカップのんでたおっさんは、「会社の窓からホームレスみてたら、『あ、あれでもOKじゃん』って思っちゃった。だからホームレスになった。金はだいぶ稼いで、貯金も家もあったし、息子も独立したから、離婚してなんもかんも嫁にあげて、新宿にきた」って言ってたな。名刺も通帳も見せてもらったから嘘じゃないと思う。 なんだか都市伝説みたいな話だけど、こういう人、結構おおいよ。
最後に、「経済的理由」でホームレスになった人。親から借金押し付けられた。自分が多重債務者になった。リストラにあった。土方してたけど怪我した・・・・等々。 左翼の人たちが「あああ。救ってあげなきゃ」って思うのはこういう人たちなんだろうね、きっと。
でもね、こういう人って、案外少ない。 なぜならば、大概が嘘だから。よくよく聞くと、「ホームレスしたかったんじゃん」って人ばっか。 うーん。それはちょっと酷かな。厳密に言うと、「ホームレスも選択肢の一つ」って局面を迎えたときに、ホームレスになるという選択肢を拒まなかった人 ってことだな。 いずれにせよ、話を突き詰めて聞くと、「いろいろしんどくなっちゃってさぁ、こうなっちゃったんだよね」って言う。 みんなそういう。みんな、最後は「いろいろしんどくなっちゃってさぁ」って言う。 これって、広い意味で「ホームレスに就職したパターン」だとおもう。要は、頑張る(行政や弁護士等に救いを求めるという事も含めて)のがめんどくさかったってだけの話。 まあ、俺もそうだったんだけどね。
「新自由主義経済のおかげで、競争が激化し、会社をリストラされ、その直後に高利貸などの悪徳業者にだまされて、気づいたらホームレスになっちゃったんです・・・」ってな、左翼の皆さんが泣いて喜ぶような話は、俺はあんまり聞かなかった。
とまれ、大別して、こんな感じの3パターンを経て、「あーあぁ、もう、なんもかんもめんどくせーなぁー」の世界の住人になる。
で、結局、どうするのか。何が言いたいのか。
何が言いたいかっていうと、「ホームレスなんて支援できやしないですよ」「やっても無駄ですよ」ってこと。
もうね、絶対的にホームレス救済って無理なのさ。
ハウスレスのおっさんたちは、ハウスレスな生き方を選んでるだけの話なんで、救済も支援も糞もない。サーフィンが好きで、年がら年中波にのってたいから湘南近辺で日雇い派遣しかやらない若い子といっしょ。そんな子に「小泉改革のせいで、若年層の就労状況が悪化したんだよね。君はそれの被害者だ」なんて言ってもしやーないでしょ。それとおんなじ。人のライフスタイルに口を挟むなってことだよね。
ホームレスもおんなじで、もはやホームレスになっちゃったら、ホームレスがという生き方がライフスタイルなのさ。左翼の人が好きな言葉で言うと、「個性」って奴なのかもね。 多様な生き方の一つなのよ。最近のナウなヤングは、「ダイバーシティー」とかいうのかな。 まあそんな感じなわけよ。
上述の3パターンの中で、「知的障害パターン」っていうのは、一番悲惨だと思いがち。そりゃ、悲惨さ。でも本人としては、病院とか施設とかでお仕着せの生活する方が、よっぽど悲惨なんだよ。
「ホームレス就職パターン」なんかは、あきらかにライフスタイルだよね。 そんな奴らが、救済策/支援策を利用すると思う?
「経済的理由パターン」は、まだなんとかなると思うでしょ? 救済策/支援策を使ってくれると思うでしょ? でもね、そうじゃない。彼らもだめ。 だって、「いろいろしんどくなっちゃった」からホームレスしてんのに、救済されたら、またあの苦界に逆戻りなわけよ。助けないでほしいのよ。
それでも「ホームレスを救済しよう/支援しよう」っていうのは、もうね、自己満足以外のなにものでもないと思うんだよ。
放っておいてやれよ。な。
それでもなんかしたいというのなら
もしそれでも、「やっぱり可哀想だ」の想いに突き動かされて(って、その想いは、差別感情と一卵性双生児だとおもうけどね)、なんかしようとするならば、ホームレスになる前の段階か、卒業しようとしている段階で、支援してあげればいいとおもうよ。
リストラ被害者救済とか、多重債務者支援とか、社会保険支払わない会社を糾弾するとか、そんな型の支援の方が、図書館で支援策の斡旋するよか、よっぽど意味がある。
また、ふっとホームレスを卒業したくなるときがあるんだ。 そこらへんの話を本当は詳しく書きたいんだけど、そこを書くのは、結構俺にとっては勇気のいる事で、もう眠たい事もあるし、また今度にする。
結論
いずれにせよ、ホームレスに支援は必要ない。厳密に言うならば、ホームレスは支援を必要としていない。
それでも支援しようとするならば、もう少しニーズを詳しく精査して、もうちょっと顧客オリエンテッドな話をした方がいいと思う。
ニーズのないサービスは自己満足でしかない。 必要としないサービスを顧客に掴ませようとする行為は詐欺でしかない。そして詐欺師つーもんは、常にカモを徹底的にさげずんでいるもんだ。
追記
このエントリーは、以下のエントリーを念頭に置きながら書きました。
http://d.hatena.ne.jp/Romance/20080901#p1
http://d.hatena.ne.jp/chnpk/20080831/1220163097
http://d.hatena.ne.jp/pbh/20080902/1220357385
http://d.hatena.ne.jp/naoya_fujita/20080902/1220384311
http://d.hatena.ne.jp/hokusyu/20080901/p2
http://d.hatena.ne.jp/rajendra/20080902/p1
>elasticaさん。 はてブでのご助言ありがとうございました。
はじめましてですが児童養護施設(旧孤児院)を出て身寄りを頼れず、生活設計にも失敗してホームレス、というパターンがけっこうよくあると聞き及びました。管理人様がご存知の範囲では如何でしょう。いえね、児童養護施設がけっこう左翼の巣窟になっている場合が多く、そういうところでは子ども支援の美談が声高に語られるだけに、卒園生へのケアや追跡調査が非常に手薄なのは犯罪的だな、というのがありまして…。ただでさえ乏しい福祉予算で誰をケアしているのかと(実は子どもではなく職員ではないのかと)。ともあれ、上のようなご指摘は実態に即しているのだろうな、と思いました。
>yks_der
ごめんなさい。 正直ようわからんです。
私がホームレスをしていた1年強の期間に直接見聞きした話は、「親に捨てられた」って話がおおいですね。 おおいって言っても4件ほどしか聞いてないですが。
その他のあからさまに知的に障害がある人というのは、もう会話が成立しないので、どのようなきっかけで、ホームレスになったかなんてとてもじゃないけど聞けない感じでした。
救済無理!!ってトコの話ですけど、
NEETも似たような感じじゃないですか?
どっちも「きっかけ潰し」や、「脱出したくなった時」にヘルプが必要だと思う。
>元ニート
仰る通りだと思います。 「ホームレスやってる最中」のあの特殊な精神状態というのは、とてもじゃないですけどまともに「他人からの救いの手」を素直に受け取れる状態じゃないです。むしろ支援であれ救済であれ、他人からの干渉がものすごくうっとおしいぐらいです。
であるならば、ホームレスへの支援ではなく、ホームレスを作らない支援/ホームレスから卒業(敢えて「抜け出す」という言葉は使わない)する支援 こそが、必要なんじゃないかと思っています。
> ニーズのないサービスは自己満足でしかない。 必要としないサービスを顧客に掴ませようとする行為は詐欺でしかない。
なぜサービス業=ビジネスのアナロジーで社会福祉・人道支援を語ろうとするのでしょうか?
あと、不幸の渦中にいるひとって、意外と自分の境遇を客観的に把握できないものですよ。さまざまな事情を抱えていようと、主観としては「なんかいろいろ、しんどくなっちゃって」としか語りえないこともある。当事者の主観ベースで論を組み立てるのにはかなり無理があります。
<幸せを自分で決める人>と<幸せを決めてあげよう、決めてもらおうとする人>が一緒に居るからゴチャゴチャするわけですね!
というか、興味がある他人の自分語りが凄く好きなので、これからも続けていただきたい。
>y_arim
>なぜサービス業=ビジネスのアナロジーで社会福祉・人道支援を語ろうとするのでしょうか?
おそらく、私が頭悪いからでしょう。 単に、ご引用された箇所の表現以上に適切なアナロジーを見つける事が出来なかっただけです。
逆質問で恐縮ですが、なぜビジネスのアナロジーで社会福祉を語っては行けないのか、お教え願えませんでしょうか?
>y_arim
>当事者の主観ベースで論を組み立てるのにはかなり無理があります。
私のサンプリングが少ないとか偏っているというご指摘ならば、それはそれで甘んじて受ける(べき)ご指摘だと思いますが、この箇所はちょっと納得出来ません。
仰りたい事はよくわかるんですが、その仰りようを突き詰めると、「当事者の主観は関係ない」ってことになるんではないでしょうか? 当事者の主観を離れて、第三者が客観的に「これがお前に必要な施策だよ」って救済なり支援なり導きなりをすべきもんなんでしょうか? それはそれで、「党中央が人民を指導する」みたいでかっこいいとは思いますがね。
>kajuntk
腫れ物を触るようでレスつけにくいんですがw
子供が出来ると、自分史の棚卸しがしたくなるもんなんです。
ところで、こないだワイフハックのご指南をいただきましたが、あれ、効果覿面ですね。すげーきいた。
効きましたか。それは良かった。
偶にそういうのをして置くだけで、夫婦生活なんて結構上手く回るもんだとおもいます。
あとは仕事帰りにスイーツ買って帰るとか結構効きます。食べ物系重要です。
1丁目付近ならパステルが10時半までやってます。
それより遅くなるならちょっと足を伸ばして四丁目交番前の交差点にあるお店(深夜2時)をオススメします。
あの辺で夜までやってるスイーツ屋さんはこの2つくらいかな。
はじめまして。
なんだかいきなり、他の人へのレスに対する、横レスなのですが(汗
すみません…
>なぜビジネスのアナロジーで社会福祉を語っては行けないのか
社会福祉は、基本的にビジネスが成り立たないから、だと思います。
(ビジネスとして成り立つようにうまくまわせば理想だけど、なかなかそういうのないから、てこ入れが絶対要る)
とくに、障害者福祉とか孤児福祉とかそういうのは、ビジネス的に考えたら切る対象でしかなかったり…。
単にたとえ話として持ってくるだけならともかく、結論部分にまでビジネス的考えを援用しちゃうと、少し怖いことになりそうです(汗
エントリには、部分同意、部分反対、結論には不同意、です。
抜け出すための援護が少ないというコメント欄での意見には、ほんとすごく同意です。
サービスの主体者を誰に置いているのかが不明なので、コメントで「なぜビジネスのアナロジーで社会福祉を語っては行けないのか」と急にビジネスという単語が出てくるのか分かりませんでした。
ビジネスって言葉を使うと「利益」が目的で、で、サービスの供給者が行政なら目的は「利益」じゃない。
なので顧客という単語が出てくるのも、ちょっと理解しずらかったです。
後、本文では「ホームレスに支援は必要ない」で、コメント欄では「ホームレスへの支援ではなく、ホームレスを作らない支援/ホームレスから卒業(敢えて「抜け出す」という言葉は使わない)する支援 こそが、必要なんじゃないかと思っています。」
とあるので、結局何が言いたかったのか、ちょっと分かりにくいです。
>id:tasoi
>単にたとえ話として持ってくるだけならともかく、結論部分にまでビジネス的考えを援用しちゃうと、少し怖いことになりそうです(汗
特定個人の「セイギ」という思い込みによって、いろんな運動が展開されるよりも、利潤があがるという事において組織が回り続けるという運動の方が、よっぽど健全だと思うんですがね。
ちなみに、福祉活動でも利潤を挙げているところは、近年、それなりにありますよ。
確かに初動では寄付金や助成金というものが必要なケースが多いですが、それって普通の起業でも一緒でしょ?
私がお手伝いしている寿町のとある団体は、それなりの利潤を上げています。利潤を挙げているからこそ、会計の透明度が高く、その透明度が運動の説得力を担保するという側面もあります。
>六月さん
>サービスの主体者を誰に置いているのかが不明なので、コメントで「なぜビジネ>スのアナロジーで社会福祉を語っては行けないのか」と急にビジネスという単語が>出てくるのか分かりませんでした。
上の方にある、id:y_arimさんのコメントをご参照下さい。