この商売。

最近、「森友事件でどんなけ儲けた?」とよく尋ねられる。
「話題の案件にとびついて小銭をかっさらうゴキブリめ!」という趣旨からのご質問であれば、「なんでもお前のその劣悪な頭脳環境を基準に推し量るんじゃない」と丁重にご対応申し上げることもできる。が、厄介なのは、若い人、それも物書きとかジャーナリズムとかに憧れる人から寄せられるこの種の質問だ。
 
困るのだ。本当に困る。
 
僕のような地べたを駆けずるしか知らない野良犬のさらにその尻尾の先についたノミ程度の物書きにとって、こういう若い人達からの「熱いまなざし」ほど困る物はない。だって教えられることなどないし、また教えるべき立場にもない。そもそも若い人の方が偉いんだから。
 
それに、あのなんとういうか、キラキラしたまっすぐな眼で「どれぐらい稼げるんですか?」とか聞かれたら、やっぱり「悪いこといわんから、こんな仕事、興味持たない方がいい」と言いたくなる。だってほんと儲からないんだもの。
 
だから、若い人には有り体なことをいうようにしている。
森友事件の取材を初めて今日まで、取材・移動・宿泊・打ち合わせ等々でかかった経費と、原稿料・資料提供料・講演料であがった売上げを差し引きすると、約250万円の赤字であると。そしてこの250万円の赤字は回収の目処など一切たっておらず、なんだったらすぐ破産してもいい気分だと。
 
「でも、それでもやりがいをお感じになられておられるんでしょう?」 
 
来やがったな。このやりがいモンスターめ。やりがいなんてねぇよ。こっちはただ只管、目の前の課題を粛々と片付けてるだけだ。そもそも「やりがい」なんていう訳のわからん要素ドリブンで体が動くほどこっちは若くない。
 
「得がたい経験をされて、価値ある仕事されて、すごいじゃないですか」
 
いらないんだよ、そういう見え透いたおべんちゃら。それにね、得がたい経験を得たわけでもない。森友事件の取材5ヶ月で得たものといえば、気づいたら7kgも増えていた内臓脂肪ぐらいだ。おかげで一張羅のビスポークのスーツもはいらねぇよ。明日はパリ祭でフランス大使館に招かれてるのに、入る服がなくて涙出そうだよ。何だったら君、今すぐこのウエストを3cmばかり凹ましてくんねぇか?
 
最近は、こうやって日々、若い人の夢を打ち砕いてる。そしてそれでいいと思っている。これは菩薩行だ。悪いこと言わねぇ。フリーの物書きとかになるもんじゃない。月並みなアドバイスだが、ちゃんと就職しろ。
 
父ちゃん母ちゃん泣かせんな。それが人間、なにより大切なんだから。
 
できたら貯金もしろ。将来は常に不安定だ
もしものことがあったらどうする。
ここぞって時に金に詰まるのはよくない。
のんだり食ったりを我慢する必要はないが
商機や転機に備えて貯金はしろ。金がないと
売られた喧嘩も買えねぇぞ。だから組織で
はたらけ。君らはサラリーマンをバカにするが
楽な仕事では決してないぞ。リーマンは偉いぞ
しっかり組織で組織で偉くなれ。そして
いつか君が偉くなったら……。
 
そん時は、俺を使ってくれ。

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